クリスマスの日、突如思い立ってひと駅だけ電車に乗り、
私が生まれ育った実家の最寄り駅でした。
駅のすぐ脇にある美味しいケーキ屋さんでケーキを買い、
実家に向かおうとしていました。
クリスマスだし、 親友だけにクリスマスのメッセージをLINEで送ったけれど、
もっと誰かに愛を届けたくて、 実家にケーキを持っていくことを思い立ったのでした。
バスの時間まであと5分!
ギリギリ間に合うか、と思いながらバス停に到着すると、
数人の人がバスを待って列を作っていました。
あー間に合った。
列の後ろに並び、スマホをいじって時間つぶし。
でもバスがなかなか来ません。
5分待ち、10分待ち。
一緒に待っている人たちが、ソワソワし始めました。
遅いわねぇ。
そんな独り言を言うご婦人も。
15分待ち、お子さんのお稽古ごとに間に合わないからと、 タクシー乗り場に移動していった親子もいらっしゃいました。
私の前に並んでいた50代くらいの女性が、
「昨日も20分待たされたのよね」と言いました。
きっと毎日このバスを利用しているのでしょう。
その前に並んでいた年配のご夫婦らしきカップルが、
「そうなんですか。」とその女性に答えました。
私の後ろに並んでいた年配のご婦人が、 このままこのバスを待とうか、 別ルートのバスに乗って行こうかしらと声に出して言いました。
すると私の前の女性が、本当に悩みますよね、と答えました。
私も、本当に困りますね、と言いました。
私の後ろの年配のご婦人は、 しびれを切らして別のルートを走るバスがやってきたのを見て、 そちらのバス停に走っていきました。
遅いですね、と前の女性が言いました。
本当に遅いですね、と私が言いました。
そんなことをしているうちに、 ようやく30分ほど定刻を過ぎた頃、バスが到着しました。
ダイヤが乱れていてすみません、と運転手さん。
年末だから仕方ないわね、 と待っていた人たちが口々に言いながら、 バスに乗り込んでいきました。
みんなの顔に安堵の表情が見えました。
ただそれだけのこと。
でも面白いなと思いました。
バスが来なくて不安になると、ひとり、また一人と、 独り言を言い出すのです。
それを受けて、誰かがまた何か言い出すのです。
文句をいいつつ、あなたの気持ちもわかるわと共感し、
どうしようかしらねと悩む。
そうやって、 不安な気持ちが少しやわらぐことを感じているように見えます。
自然に行われていることだけれど、 普段の生活にとても大切なことを教えてくれることだなと思いまし た。
不安なことが起きたら、誰かにそれを聞いてもらうこと。
誰かにそうだよねと共感してもらうこと。
どうしようかと一緒に悩んでもらうこと。
すると、やっぱり私はタクシーにするわ、とか、
私は別ルートのバスに乗るわ、とか、
私はこのまま待つわ、とか、
自分の方向性が決まってくるようなのです。
人間って、本当にうまくできているなと感心しました。
人はそうやって、困難を乗り越え、 自分の道を選び進んでいくのだなぁと
しみじみと思った冬の午後でした。
あなたは何か不安に思ったとき、ひとりで抱えていませんか?
前にも後ろにも進めないように思うとき、
誰かに聞いてもらうことを忘れていませんか?
誰かとその不安について言葉をかわしてみて欲しいのです。
受け止めてもらってほしいのです。
それだけでも、前に進む勇気が少し持てて、
あなたが新しい一歩を出せるかもしれないのです。
言葉をかわすような適切な人が思い当たらなければ、
わたしたちカウンセラーも頼りにしてくださいね。