カウンセリングサービスの帆南尚美です。
私は能面のように表情を消したまま、感情のこもらない話し方で、古くからの彼に別れを告げた。
彼の納得しないような顔を見て見ぬふりをし、振り切るように彼を残して喫茶店を出た。
そのまま車を運転し、新しい彼の待つ公園の駐車場へ。
その彼はすでに私を待っていた。
私は車を降りて、彼と向き合った。
話してきたの?と彼が言った。
うん。言葉少なに私が頷いた。
じゃあ僕と付き合うんだね。と彼が言った。
うん。その途端、私の目から大粒の涙が溢れてきた。
しゃくりあげながら、しばらく泣いた。
彼が抱きしめてくれるかと思ったが、そうではなかった。
横目で彼を見たら、彼も横目で私を見ていた。そして言った。
それ、僕のための涙じゃないよね。
僕のためじゃないなら、泣かないでほしいな。
彼は少し険しい表情だった。
私は図星な感じがして、恥ずかしい気持ちがした。
誰のために泣いているか、なんて考えたこともなかった。
確かに目の前の彼のためではない。お別れしてきた彼のためでもない。
自分のために泣いている。
自分が誰かとお別れしたことが悲しいだけなんだ。
こんな悲しい状況にいる私を哀れんで、なぐさめて欲しいと思ったんだ。
悲しいストーリーを自分で作り上げて酔っていただけ。
目の前の彼に失礼だとようやく気がついた。
私は必死で涙を飲み込んだ。
平気な顔に戻ってから、ようやく、次はいつ会えるの、と問いかけた。
~誰のための涙か?(心理解説編)~ に続きます! お楽しみに♪