【アメブロ記事】あのときは、ごめん

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たまにふと思い出すようなことで、
なぜあんなことをしてしまったのだろう、と思うことはありませんか?
後悔のようや、恥を感じるような、
でもやってしまったからどうしようもない
とはいえ何度も思い出すこと。
私はもう20年くらい前の、ある平日の夜を思い出すんです。
残業で、今日も遅くなっちゃったな、と思いながら、帰宅途中に閉店間際のスーパーに寄り、値引きシールの貼ってあるお惣菜を、晩御飯のおかずに買って帰りました。
帰宅が夜の10時や11時になるのは毎日のことで、夫もだいたい同じか、それよりも遅い時間に帰宅することが多かったので、
私は、家についたら冷蔵庫にある残り物と今買ったお惣菜で、夫と二人分の食事を用意しようと思っていました。
当時住んでいた小さなアパートの目の前まで帰り着くと、うちの部屋の明かりがついているのが見えました。
あれ?もう帰ってるのかな?
めずらしく夫が私より先に帰っているようでした。
私は夫がお腹を空かせて待っているかもしれないと思って、急いでアパートの階段を駆け上がり、玄関のカギを開けて部屋に入りました。
「ただいま~」
すると中から夫が、「おかえり~」と言いながら、私のピンクのエプロンをつけて、照れくさそうに顔を出しました。
あれ?なにやってるの?
私が聞くと、夫は「ごはん作ってるよ~」と明るく返事をしました。
夫は料理をしない人だったのと、私自身料理が得意ではないので、夫に料理をしてほしいな~と常々思っていたこともあり、
私は飛んで喜んで、キッチンを覗きに行きました。
そこには、今焼きあがったばかりのハンバーグがふたつ、お皿にのっていました。
「わぁ、おいしそう。すごいね、こんなハンバーグが作れるんだ!」
私は喜んで夫を見ると、夫はまた照れくさそうに笑いました。
なんだか幸せ。
そう思った時、私はふと嫌な予感がしました。
それは、私が毎日残業で遅くなるという忙しさにかまけて、ずいぶん前に買ったまま冷蔵庫に放置してあった「ひき肉」でした。
もう賞味期限をずいぶん過ぎていて、さすがに食べられないな、、無駄にしてしまって申し訳ないけど、捨てないといけないな、と思っていたけれど、捨てることさえ忘れていた「ひき肉」でした。
まさかね。
そう思ったけれど、念のため冷蔵庫を開けて「ひき肉」の存在を確認しようとしましたが、
ありませんでした。
私は夫に聞きました。
「そのハンバーグのお肉、どうしたの?今日買ってきたの?」
すると夫は、ニコニコして言いました。
「冷蔵庫に入ってた肉だよ。」
私はサーっと血の気が引く音を聞いたような気がしました。
そして急に怒りがわいてきました。
私はキッと夫のほうを振り向くと、突然怒った口調で言ったんです。
「そのお肉は賞味期限が切れてるやつじゃない!なんでそんなのを使ったの?」
急変した私に、夫は一瞬たじろいだように見えました。
そして言ったんです。「だって冷蔵庫にあったから。」
「冷蔵庫に入っていたからといって、賞味期限を見ないで料理に使うなんて、ありえないでしょ?いい加減にしてよ!そのハンバーグ食べれないわよ!」
頭に血がのぼった私はそう言いながら、私は何に怒っているのだろう、と思いました。
夫を見ると、少し悲しそうな顔をしていました。
私が「悪いけど捨てさせてもらうね。」と言うと、夫は小さく「うん」と言いました。
美味しそうなハンバーグをゴミ箱に捨てながら、私は涙が出そうになるのを必死にこらえていました。
罪悪感を感じると相手を責めたくなる
料理をしない夫が、たまに会社から早く帰れたからと、料理をしてくれていたのは私にとってとても大きな喜びでした。
ところが一転して、
私が賞味期限切れのひき肉を冷蔵庫に入れっぱなしにしていたがために
せっかく夫が作ってくれたハンバーグを捨てなければいけないことがわかりました。
彼の愛情、優しさが詰まった美味しそうなハンバーグ、ピンクのエプロンをつけているお茶目さ。
そんな幸せの象徴を全部、私が踏み潰してしまったようで、
私は申し訳ないという気持ちを感じることさえできず、こうなったのは夫が賞味期限をきちんと確認しなかったからだ、と夫のせいにしました。
罪悪感。私たちが自分を罰せられるにふさわしいと思うときに感じるものをそう呼びます。
そして私たちはそんな罪悪感を感じることが本当に嫌ですから、自分が悪いということを認めずに、相手を責めたり、不機嫌な態度になったりします。
心のどこかでは、相手の悪いところは全体の1割もなくて、本当に謝らなければならないのは自分なのかも、ということに薄々気づいているのです。
でも認められないんです。
なぜなら、彼がハンバーグを作ってくれたということは、忙しい中にたまに早く帰宅できたその時間を、二人のために料理にあててくれたことや、
私が喜ぶだろう顔を思い浮かべながら玉ねぎを切ったりハンバーグの種をこねたりしてくれたこと、そんな彼の愛情や時間すべてを踏みにじってしまったなんて、許されるはずもないことだと思ったからなんです。
その日の夕食は、会話もなく、ふたりで黙ってスーパーのお惣菜を食べました。
あのときは、ごめん
話は一番最初に戻りますが、たまにふと思い出すようなことで、あんなことを言ってしまったとか、やってしまったと、今でも申し訳なく思うことは、誰にでもあると思うのです。
私にとってはまさに、このハンバーグ事件がそれでした。
あれ以来、怖くて一度も話題に出すこともできず、放っておいたことですが、いつも私の心の奥底で、私が私に言うんです。
「あんなことを言ったお前は本当にひどいやつだ。」って。
ところが、心理学を学び始めたころ、こんなことを教わりました。
「大抵のことはゴメンで許される」
ゴメンで許されるなら警察いらないぞ!と思ったものの、
そもそも人に許されると思っていないから、悪いなと思ったことをしてしまったときに、
私たちは隠すか、忘れてもらうまで待つか、忘れてもらうように一切そのことに触れない、なんてことをしますよね。
謝ったところで、「もういいよ。」なんて、形だけ許してもらってもなぁ、なんて思うこともあるかもしれません。
実はこれ、相手の人のことを、「私を絶対に許さない小さいやつ認定」をしていることとも言えるんです。
私は夫に対してひどいことを言っただけでなく、「あなたはどうせ私を許さない小さいオトコよね。」と思っていたとは・・・・
またまた私は罪悪感を感じそうになりました。
そして私は決めたんです。夫に謝ろうって。
20年間ずっと思い続けていた申し訳ない気持ち。
私は夫に、あのときあんなことがあって、こんなことがあって、私があんなことを言ってしまって、、ずっと謝れなかったんだけど、ごめんね。
と言いました。
夫の顔を見るのが怖くて下を向いていたけれど、言い終わって私は夫の顔をチラッと見ました。
すると夫が遠くを見るような目をして言ったんです。
「う~ん、覚えてない。」
私はズルっと拍子抜けをしました。
「覚えてないんだ?」
「うん、覚えてない。」
ハンバーグ事件は終わりました。
夫が本当にそれを覚えていなかったのか、定かではありません。
でも「もうそのことはいいよ。」と言うよりも、「覚えてない。」と彼が言ったのは、彼の優しさであり、彼の許しの証なのかなと私は思っています。
あのときは、ごめん。
長らく言えなかったひと言を言ってみると、ずっと心に引っかかっていた罪悪感が、感謝の気持ちに変わりました。

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この記事を書いた人

帆南尚美のアバター 帆南尚美 心理カウンセラー

職場の人間関係、夫婦・家族の問題を主に扱う。「解決したい問題がある時に、悪いところを探して正そうとするのではなく、自分の魅力や才能を受け取れば物事を全く別の見方で捉えることができ、自分の枠から自由になり、のびのびと楽に毎日を送れるようになる」というスタンスでカウンセリングを行っている。

<得意分野>
・30〜50代の恋愛
・パートナーシップ
・夫婦関係
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・職場の苦手な人を減らしたい
・言いたいことを言えるようになりたい
・自分の良さを表現できるようになりたい
・いつも前向きな人生にしたい         など

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