社会人になって何年か経ったころ、ある男性にいきなり結婚を前提につき合ってください、と言われまして。
私はその人のことはほとんど知らないし、どうしていきなり?と驚いたものです。
有難かったけれど、知らない人と結婚前提なんてあり得ないと思い、丁寧にお断りしました。
その際、なぜ私だったのでしょうかとお聞きしたのですが、
だって毎日仕事で話しているし、
休憩時間にはプライベートのことも楽しく会話しているし、
楽しくていいなと思いました。とのこと。
・・・そんなに話していたかしら。
思い出してみると、
そういえば、仕事上で毎日話す機会はありました。
自席でランチを食べたあとに、息抜きのおしゃべりをしていたこともありました。
確かに楽しかったかもしれないけれど、特別な感じはありませんでした。
当時はなぜ好きではない人が私を好きになってくれるのか、わかりませんでした。
その頃、隣の部署に気になる男性がいて、私はいつも遠くからこっそり彼を見つめていました。
いーなー、素敵だなー
そう思うほどに、仕事の関係で彼から話しかけられることがあると、緊張し、顔がこわばり、
そんな顔を見られたくないのでそっぽを向いて話し、なるべく早く会話を切り上げようとつっけんどんになりました。
会社の帰りにちょうど出入口でばったり会っても、恥ずかしくて顔も見られずに逃げるように立ち去りました。
好意の返報性という言葉がありますが、自分に好意を示してくれた人のことを好きになりやすい心理のことをいいます。
(私は好きではないけれど)楽しくわいわい話していた相手と、
(私は好きだったけれど)目も合わさずに避けるようにしていた相手。
どちらが私の態度を好意として受け取っていたのかといえば、楽しくわいわい話していた方だというのは、今になって冷静に考えればわかることです。
そんな簡単なことでしたが、当時の私はそれがわからず、好きな人には好かれないことに、世の中の不条理を感じていました。
あるとき自分の部屋で女性雑誌を見ていたとき、女の子が目をハートにしているイラストを見つけました。
大好きな彼を目の前にして、そのワクワクドキドキした恋心を表現したイラストでした。
私はそれを見て、はて、と考え込みました。
好きな男性を目の前にしたら、私なら隠れたくなってしまうのに、ほかの女性たちは目がハートになるんだろうか?
確かに目がハートだと、好きな気持ちがストレートに伝わるんだな、と、ものすごい発見をしたように思いました。
目をハートにする。それ以来、私は恥ずかしがりやの汚名?を返上する勢いで、気になる彼の前に出るときに、自分に言い聞かせることにしたものです。
目をハートにする。実際にどのような目なのかはわかりませんが、好きな気持ちを隠さないという意味なのです。
恥ずかしがりやさんには大変な勇気がいることだとは思いますが、
好きな人には、好きだとわかる態度をして初めて、好意の返報性が効くのだと思います。
あんなに近づけなかった彼ですが、その後間もなくして、お付き合いをすることになりました。
もちろん他にも色々な要因はあると思いますが、好きな人に好かれるための最初の一歩は、好きをきちんと表現することかもしれません。