私が30歳になったばかりの頃、勤めていた会社の仕事がだんだんと忙しくなっていました。
仕事が立て込んでくると、頭のスッキリしている午前中にできるだけ多くの仕事を片付けてしまおうと、朝も6時くらいから出勤していました。
6時だとまだ他に出勤している人はいないし、一人でスイスイ仕事がはかどりました。
「こんなに朝早くから頑張っている私」に、私ってすごいなぁ、なんて思っていたような気もします。
その日も6時から仕事をしていると、8時くらいになって、一人、また一人と出勤してくる人が出てきました。
同じ部署でサポートをしてくれている女性二人は、昨晩一緒にカラオケに行ったらしく、出勤した途端、昨日は楽しかったよね、という話をし始めました。
私は、構わず仕事をしていました。
30分ほど経っても、二人の女性はまだおしゃべりをしています。
だんだんと二人の声がうるさく感じてきました。
私は、気が散らないように、「集中、集中!」と自分に言い聞かせました。
しかし、どうにも二人の笑い声やおしゃべりがうるさいので、クルッと二人を振り返って言いました。
「すみません、ちょっと静かにしてもらえませんか?」
二人は「あ、すみません」と言って、すぐに口をつぐんだので、私はやれやれと思いながら、また仕事に集中しました。
たったこれだけのことだったのですが、翌日から私の周りが一変しました。
先ほどの二人を中心に、その部署をサポートしてくれている5、6人の女性たちが、なんだかとってもよそよそしいのです。
おはようございますと挨拶しても、みんなモゾモゾして挨拶は返ってきませんでした。
業者さんからいただいたお菓子を3時のおやつに皆に配ってくれるときに、私にだけ配ってくれませんでした。
彼女たちにやっていただくことになっている仕事をお願いしても、以前なら「了解しました〜!」と明るく言ってくれたのに、なぜか「はい・・・」と、今までとは明らかに様子が違います。
ん?なになに?何かあったのかな?
私は理由を考えましたが、わかりませんでした。
彼女たちの中で、私がもっとも仲良くしていたKさんが、何か言いたそうな顔をしてこちらを見ていたので、Kさんの近くに行き、
「何かあったの?」
と私は聞いてみました。
すると、Kさんは申し訳無さそうな顔をして、小声で言いました。
「分かってないんですか?」
「え?何を?」私は頭の中が『?』でいっぱいになりました。
「みんな、尚美さんのこと、エラそうって言ってますよ。」
え??
「尚美さんは仕事をたくさんしているからってエラそうだし、上司に可愛がられているのは、上司に媚びを売ってるからだって言ってますよ。」
なにそれ。私は思いました。
なぜ急にそんなことを言われなきゃいけないわけ?
今までみんなとうまくやってきたのに。
「誰がそんなことを言ってるの?」私はKさんに聞いてみました。
Kさんは名前を口にしませんでしたが、視線の先には、昨日私がおしゃべりを注意した二人がいました。
あの二人。。。
私がおしゃべりを注意したことを逆恨みしているのかな。
他には何も思い当たりませんでした。
でも仕事中のおしゃべりは、するほうが悪いのだし、私は何も悪いことをしていないのに、ひとのことをエラそうだとか、媚びを売ってるだとか、いったい何なのよ!
私はこの状態は誰が見ても私が正しいのに、なぜ私が嫌な気分を味わわなければならないのかと首をかしげました。
「誰が見ても私が正しいのに、と思うとき(心理解説編)」に続きます。お楽しみに!
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