同じ家に暮らしているけれど、何年も会話をしていないというご夫婦のご相談を受けることがあります。
無視しているわけではなくて、必要があれば事務的な連絡のやり取り、例えばお子さんに関する情報のやり取りなどはするけれど、それ以上なにも話さないので、まるで他人が家にいるようだとおっしゃる方もいらっしゃいます。
同じ部屋にいることもほとんどないので、たまに冷蔵庫の前とか廊下でバッタリ会うと、うわっ、と一瞬たじろいだりすることも。
当然ながらここ何年もお互いに笑顔もなく、家には重たい空気が感じられ、ダンナ様が外出しているときが唯一リラックスしていられるとおっしゃる方も。
一緒にいるのに寂しい
同じ家に暮らしている人がいても、それが心を通わせられる相手ではないとき、人は何かのきっかけで、酷く寂しさを感じることがありますよね。
こんなことならば、一人暮らしのほうが余程いいと思うかもしれません。
でもなぜなんでしょうか。
一人の方が寂しいはずなのに、二人の方が寂しく感じるなんて。
私たちは、そこに誰かがいれば、心が繋がることを望みます。
もちろん赤の他人であればそれは普段はないのですが、それでも、例えば走行中の電車が、信号機故障などで急に停車してしまったとしたら、電車に乗り合わせた全くの他人同士でさえ、「どうしたんでしょうね。」とか、「困りましたね。」などと声をかけ合うのを経験された方もいらっしゃるかもしれません。
不安になったときなどは、赤の他人であっても私たちは自然と繋がろうとするものです。それは繋がることで心が落ち着くことを知っているからなのかもしれません。
にもかかわらず、心が不安なときでも、家にはダンナ様がいるけれど話せないし繋がれないというとき、彼との間に幸せな関係性を持ち得ない絶望感や嫌悪感とともに、どうしようもない寂しさを感じるのかもしれません。
なぜ話さないのか
ダンナ様と会話をしないという方に、自分から話しかけたりしないのですか?と尋ねると、たいていの方はしないとおっしゃいます。
もうウンザリしていて、話しかけないことにしたと言うその裏には、きっとそれまでに何度も、話しかけてみたけれど上手く行かなかった失敗感や、彼から関係改善をしようという態度が一切感じられない怒りがあるのかもしれません。
そうすると、関係改善したいならあっちから歩み寄るべきだ、なんて思ったりしますよね。悪いところを全部改善してから出直してこいみたいな。
そりゃそうです。こっちはやること全部やったんだから、って感じますものね。
その思いには、またこちらから歩み寄るなんてことをしたら、負けるみたいだから嫌だという、勝ち負けの気持ちがあることも多かったりするんですよね。みんながみんな、というわけではありません。
でも負けたくないという気持ちは、実は幸せになるための足かせになることがあります。
なぜなら、本来ならあなたにとって一番大切なのは幸せになることのはずなのに、勝ち負けにこだわっているときは、なぜか幸せよりも負けないことのほうが重大であるように感じて、それを優先してしまうことかあるからなんです。
負けないことこそが幸せとイコールだなどと思うかもしれませんが、本当にそうなんでしょうか?
心から望むもの
ダンナ様と口をきかないし、ダンナ様のことなんて大嫌いだとおっしゃる方の中には、彼のことが本当に嫌で、頭から離れないということもあるようです。
目の前にいなければ思い出さなくて済むけれど、顔を見ると嫌な気分になるということもあるようです。
実は心の面から考えると、愛がない状態にあるとき、私たちはその対象者などについて無関心になると言われています。
もう本当にどうでもいいわけです。
どうでもいいという気持ちの中には怒りもなく、すっかり気持ちが片づいてしまっている感じかもしれません。
だとしたら、もし彼のことを考えてむしゃくしゃしたり、気分が悪くなるとしたら、それはどういうことなのでしょうか。
とはいえ私たちは、自分のことでさえ、心の奥の奥で何を望んでいるのか意識することができないのが、もどかしいところです。
過去に何度も何度もダンナ様とやり直せないかとか、彼がまたこちらを見てくれないかとか、もう一度二人で心から笑い合えないだろうかと、たくさんたくさん考えて、努力して、頑張って、色々と試してみたことのある方なら、こんなふうに思われるかもしれません。
それは、またあの楽しかった頃のようにもどれればいいけれど、きっと無理。そして、頑張っても上手く行かなかったときの、あの失望感とか落ち込みをまた経験するくらいなら、もう彼とは距離をとったまま、近づかないのがいい、と。それほどに二人の関係を良くしようと心を砕いたからこそ、大きく傷ついてしまったのかもしれません。
幸せであることを許す
ダンナ様と何年も口をきかないのに、なぜ離婚をしないのかを尋ねれば、おそらく生活費とか、子どものこととか、いろんな理由がありますよね。
一方、上手く行かないならと、収入もないし子どももいるのに離婚される方もいらっしゃいます。
つまり、今の状態は幸せではないけれど、そのまま続けているのには理由があって、もしかしたらそれは、お金だとか子どもなどという理由ではなくて、今以上の幸せが想像できないから、かもしれません。
離婚しても大変そうだから、それなら楽しくはないけれど今のままでも仕方ないかなと思うこともあるでしょう。
その場合、
●離婚=生活が大変かも+きっと幸せではない。
●今のまま=生活は安定+幸せではない。
という、二択しかないと考えているのかもしれませんが、
●離婚=生活は大変かも+すごく幸せ
とか
●今のまま=生活が安定+ダンナ様と再度ラブラブ
という選択肢もないことはないのです。
あなたには、本当に幸せになる資格があるはずです。
これに大きく頷くことができると、今のままより、もっと別の選択肢が、急に目の前に浮かんでくることもあるようです。
つまり、自分で自分が幸せになることを許してあげることで、新たな道が開けることもあるのかもしれません。