お母さん、それは愛じゃないんじゃないの?という不平不満

chris-lawton-PyRU3x6EJoI-unsplash心理学で「好意の返報性」と呼ばれるのですが、人は好意を示されると好意で返したくなるものです。

たとえば旅行に行ったときに、いつもお世話になっている人にお土産を買っていこうかなと思うのも、好意の返報性と言えるかもしれません。
私はある時期、母のことをとても苦手だと思い、しばらく心の距離を置いていたことがありました。実家と私の住んでいるところは、直線距離で8キロくらいで近いのですが、ほとんど立ち寄ることもありませんでした。
心理学を学び始め、親との関係を少しずつ見直していた頃、年に1度くらいは実家に帰るようにしました。その際私は手ぶらで行き、手ぶらで帰ってきました。
ところがある時、ふと思い立って、実家に帰る途中に、美味しい和菓子屋さんに寄って母の好きな大福を買って行きました。
昔はいつも親の機嫌と取ろうとしていたので、母にお菓子やらを買って持って行っていたのですが、もう機嫌を取るのはやめようと思って以来それはやめていたのです。
母は大福を喜んでくれました。
私はそれを嬉しいと思いました。
ところが私がそろそろ帰ろうとしたとき、母はおもむろに手提げの紙袋を持ってきて、その中に家にあったお菓子や果物などを入れて、パンパンに膨らんだ紙袋を差し出し、これを持って帰りなさいと私に言ったのです。
私は、ありがとうと言って受け取ったのですが、そのときに「あぁ、好意の返報性だな」と思いました。そして急に残念な気がしたのです。
私は純粋に母が喜んでくれたらいいなと思って大福を買ってきたのに、母からは好意の返報性によるお返し、つまり愛情ではなく条件反射のようなものだと思ったのです。
そして、母のやることなぞ、こんな程度のものなのだなと、心の中でふてくされたのです。
そのふてくされた感じは、その後しばらく続きました。
なんとなく面白くない感じが続きました。
面白く無い感じを持ち続けるのはしんどいので、私はようやく、自分の感情と向き合おうと思い、「なぜ母が好意の返報性に則っていると、私は面白くないのだろう。」と考えたのです。
好意の返報性に則っている、つまり私が大福をあげたから、母はお菓子をくれたわけで、母が自然発生的に私に愛情を感じてお菓子をくれようとしたのではないことが気に食わなかったのです。
つまり私は、母の愛情というのはどのようなときも純粋なものであるべきで、私が大福をあげたからお返ししようと思うのは邪道だ、それは愛ではないぞ!と感じていたのでした。
私は母の中に、女神様のような純粋な愛を期待し、母が女神様のようではないということに、腹を立てていたのでした。
言葉に表してみると子供じみていてくだらないことかもしれませんが、実は普段の生活では、私たちはたくさん子供じみた文句を感じていることが多いようです。
大福の「お返し」であっても、母の愛は愛。
なのに、母が心理学の法則に影響されて差し出したものは、愛では無いと感じたのは、つまり無意識のレベルでは私が自分のことをたいして価値ある存在ではないと思っていて(無価値感を感じていて)、母を使って自分の無価値を証明しようとしたと考えることもできるのです。私たちは、よくこういうことをやってしまいます。
私は自分を価値のないものとして扱うのはやめようと思いました。
自分が価値あるものであると思えば、そんな価値ある自分に対して相手がやってくれることもまた、価値あるものなのです。
それ以来私は、実家に帰るときには母の好きなお菓子を買っていきます。
母に喜んでほしいからです。
母は帰りに私にたくさん食べ物などをくれます。
母も私に喜んでほしいからなのだと思います。
私はそんな母の愛情を喜んで受け取り、お互いに笑顔でいられるようになったことが、嬉しいのです。

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この記事を書いた人

帆南尚美のアバター 帆南尚美 心理カウンセラー

職場の人間関係、夫婦・家族の問題を主に扱う。「解決したい問題がある時に、悪いところを探して正そうとするのではなく、自分の魅力や才能を受け取れば物事を全く別の見方で捉えることができ、自分の枠から自由になり、のびのびと楽に毎日を送れるようになる」というスタンスでカウンセリングを行っている。

<得意分野>
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